〖画像で詳しく説明〗レストア中のフィアット500Fチンクエチェントのブレーキマスターシリンダーのインナーキット交換からマスターシリンダーのエア抜き方法、要領を分かり易く画像を取り入れて説明をしています、ブレーキは自動車を止める一番大事な部品となります、意外とブレーキマスターシリンダーのエア抜きの要領は目にすることが少ないと思うのでご覧ください。
尚、こちらの作業要領は私の昔からの作業方法です、最近のABS取り付け車両などは個人のDIYでは対応できないもの、中にはマスターシリンダーは原則アッセンブリー交換の物もありますので、トラブル等に関しては責任、またクレーム等は受付できませんので参考としてご利用ください。
ブレーキマスターシリンダー インナーキット交換
ブレーキマスターシリンダーとは?
ブレーキマスターシリンダーは、自動車やオートバイなどのブレーキシステムにおいて重要な役割を果たす部品の一つです。一般的に、ブレーキペダルやブレーキレバーの操作によってブレーキフルードを送り、ブレーキシステム全体の圧力を調節します。
主な役割は次の通りです:
- 圧力の調節: ブレーキペダルやブレーキレバーの操作によって、ブレーキマスターシリンダーはブレーキフルードを送り込み、ブレーキシステム全体に均等な圧力を与えます。これにより、車両の安全な停止が可能となります。
- ブレーキフルードの供給: ブレーキマスターシリンダーは、ブレーキシステム内のブレーキキャリパーやブレーキシリンダーに必要なブレーキフルードを供給します。ブレーキフルードは圧縮性がほとんどないため、圧力を均等にかけることができます。
- ブレーキシステムの制御: ブレーキマスターシリンダーは、ブレーキフルードの供給量を調節することで、ブレーキシステムの制動力や感度を制御します。これにより、ドライバーはブレーキの効き具合を調整し、適切なブレーキングを行うことができます。
ブレーキマスターシリンダーは、自動車の安全性に直結する重要な部品であり、適切なメンテナンスや交換が必要です。
1960y’F110系 FIAT 500 F ブレーキマスターシリンダーのインナーキット交換
1.室内からブレーキペダルを外していきます
※(23)ブレーキスッチは年式やグレードにより、ブレーキペダルに装着のものとマスターシリンダーに装着されているものがあります、古い車になります標準通りの部品が付いているとは限りませんので、修理時は標準状態に戻すのか、もしくは現状の部品ですすめるのかは良く検討して行ってください。
まずは、現在どちらが装着されているかは確認しておいた方が良いと思います、(インナーキットは恐らく同じものだと思いますが部品業者さんへお問い合わせください)フロントパネル奥を下から覗くかミラーを使ったり写真を撮ったりと方法はありますので確認してください。
尚、ブレーキマスターシリンダの交換にはジャッキもリフトも必要ありませんが、ブレーキオイルの交換時にはリジットラックを使った方がやりやすいと思います、無くても工具を上手く使えばできるはずですが。
青枠の所になります、フロアーマットをめくればできます。外さなくても作業はできるかと思いますが折角マスターシリンダーをO/Hするようでしたら作動部も状態や清掃給油をしましょう。
◇ここで使う部品は割りピン、マルチパーパスグリス、♯800程度のペーパー(シャフトを磨きます)
◇工具は13mmメガネ、割りピンを外すのは私はニッパを使います、シャフトを外すためのプライヤーー、スプリングを外すノーズプライヤーです
〖作業手順〗
- 1・リターンスプリングを外します
- 2・シャフトの先端に割りピンが入っているの外します(再使用は不可です)
- 3・プッシュロッドを外す(このロッドがマスターのピストンを押します)
3番の部品は良く点検しておいた方が良いと思います、ブレーキを踏むと3番のロッドでピストンを押し込みブレーキオイルを圧縮して各ホイールシリンダーへ送る仕組みです、先端にとシャフトにはグリスアップをしましょう、金属同士の接触なのでマルチパーパースやモリブデングリスでも良いと思います浸透潤滑剤はNGですよ。これで内装は完了です。
※ちなみに私のFIATはFでブレーキスイッチは室内のブレーキペダルに付いていました。しかしマスターシリンダーの頭にも付いていたのでどちらが正しいかは不明です。もしかしたら FとLの混合になっているような気がします
2・マスターシリンダーを外していきます
マスターシンダーはフロントパネルの後ろ側にあるので場所によっては手を伸ばせば出来ない事もないかと思いますが、作業性、効率、この後のブレーキオイルの交換などを考えるとリジットラックでジャッキアップしておいた方が結果的に早く完成すると思います。
外すところは画像の所です、左上に見えているパイプは右フロントへ行きます右に見えているのは右フロントですが私のは取外し時にパイプが割れました、やはり古い車です作業中に次から次へと課題が出てきます、左の下側のパイプはリヤへ行きます、フロアー後方で二股に分かれて各リヤブレーキへといきます。
〖作業手順〗
- 1・ブレーキフルードを抜きます、リザーブタンクのブレーキオイルをスポイドなどで吸い出しておきましょう。
- 2・ブレーキパイプを3本外していきます、ナットをなぶらせないように、できればフレアナットレンチを使う事お勧めします。ちなみに私のは1本引きちぎれてパイプの交換となりました。(交換要領は次回上げます)
- 3・マスターシリンダーの取り付けナットを2本(13mm)を外せばマスターシリンダーが外れます。
私のFIATにはブレーキスイッチがマスターの先端に付いていますが、ブレーキペダルの所にもスイッチが付いているのでそちらを使います、こちらはそのままです。
ちょっとわかりずらいのですが、私のFIATはペダルにスイッチがありました、マスターシリンダーのスイッチが違うのか、壊れたのでこちらに付けたのかは不明ですが、ブレーキランプが点灯すればOKです。
3・マスターシリンダーO/H
取り外したマスターシリンダーAssyです、これから分解していきます。
〖作業手順〗
- まずペダル側の黒いブーツを外します、恐らく手で簡単に外れると思います(交換します)
- ピストンの後端にはグリスが塗ってあります、綺麗に拭き取ります、スナップリングが見えてくると思います、細いマイナスドライバーでも外れると思いますが、専用工具を使いましょう、スナップリングプライヤー
- あとはピストンが引っかからないように、優しく引き抜きます、私は木片の角で叩いて出したりします。※くれぐれも引っ掛かった時は一度作業を止めて状況を確認してください、最悪マスターシリンダーが使えなくなります、慎重に‼️
- 外れたら、シリンダー内、パイプの取り付け部を良く観察してください。
スナップリングプライヤーはこの程度の物で十分だと思います。
この手のものは、使いずらいのでやめておいた方が良いと思います、一瞬便利そうに思い購入しましたが、ぐらぐらで使い物になりません。
私のは状態は悪くないので、O/Hでインナーキットを交換していきます、交換する部品は下図の(4)になります。♯800の耐水ペーパーで慣らしておきます、使用時は水ではなく浸透剤を使ってペーパー掛けしました。
パイプのあたり面は腐食があります、ここはミニリューターを使って慣らしていきます。
清掃後はこんな感じです、しかし組み上げ後オイル漏れが発生したので、このレベルから再度仕上げてます。
交換していく部品がゴムの部品となります、こちらの画像はすでにカップ(ゴムの部品)は取り外された状態となっています。組付けには充分にラバーグリスをシリンダー側及びピストンに塗って挿入します、こちらも取外し時同様にひっかかりが出たら無理矢理押し込まず、止めて状況を確認してください。
〖補足〗
Fiatのブレーキには下の図のように凹と凸のタイプがあります、こちら間違えると部品が全く変わるのでまずは現車での確認が必要です、半世紀以上前の車なので途中でどのような整備が行われたかわかりませんので、ちなみに私のFIATはホースが凸でシリンダー凹でした。
と外した逆の順番で組み上げます
ブレーキマスターシリンダー組上がりです
4・マスターシリンダーエア抜き
ブレーキマスターシリンダーのエア抜き(フルード交換)の必要性
ブレーキフルードのエア抜きは、ブレーキシステムの正常な動作と安全性に不可欠です。以下は、エア抜きの必要性を説明するいくつかの理由です:
- 効果的な制動力: ブレーキフルードは圧縮性がほとんどないため、ブレーキシステム内の空気(エア)が存在すると、ブレーキペダルを踏んでも効果的な制動力が得られません。エア抜きを行うことで、ブレーキシステム内のエアを排除し、効果的なブレーキ力を確保します。
- ブレーキペダルの感度: ブレーキペダルの感度は、ブレーキシステム内の空気が少ないほど高くなります。エア抜きを行うことで、ブレーキペダルの反応が向上し、ドライバーはより正確にブレーキを制御することができます。
- ブレーキフィーリングの改善: エアがブレーキシステム内に存在すると、ブレーキフィーリングが不安定になる可能性があります。エア抜きを行うことで、ブレーキフィーリングを改善し、安定したブレーキ操作が可能になります。
- ブレーキフルードの劣化防止: ブレーキフルードは吸湿性があるため、時間の経過とともに水分が吸収されます。エア抜きを定期的に行うことで、ブレーキシステム内の水分や汚れを排除し、ブレーキフルードの劣化を防止します。
総合的に見て、ブレーキフルードのエア抜きは、安全なブレーキ操作とブレーキシステムの正常な機能を確保するために不可欠です。
ここからは組付けてからの準備になります、このエア抜きをしておかなと、なかなかエアが抜けず苦労する事になります、タンクにオイルを入れて一晩放置するとある程度抜けるとは思いますが、まずはエア抜きをやっておきましょう。
〖作業要領〗
まず、こちらの画像では撮影のためつなげていませんが水色の矢印がブレーキリザーブタンクから来ているパイプです、ここにペットボトルなどでオイルが溜められる容器を作ってください、もしくはトランクのリザーブタンクを外して取付けても良いです。ブレーキフルードのラインを作ります。
1・まずブレーキパイプの取付穴を開放して太めのドライバーなどを使いピストンを一番奥まで押し込みます。
2・押し込んだ状態でブレーキパイプの穴を全て指で塞ぎます、その際隙間からエアが入らないようにします、(イメージではリザーブのオイルをピストンがばねの力で戻る時に負圧でオイルを吸い込むイメージです)押し込んでいるドライバーの力を緩めオイルをシリンダー内部に吸い込ませます。
3・1と同じ要領で指を外して押し込みます、1~2を何度か繰り返すとパイプの穴から勢いよくブレーキオイルが出てきます、これで完了です。
≪注意≫
ブレーキオイルは鉄板を腐食させます(下の画像のように)性質でいうと吸水性があるオイルです、もしボディに付着したときは直ぐに水で流してください、しかし後から塗装をした車などは一瞬にして変色するので取り扱いには注意してください。(余談ですが、このような性質上車検整備時はブレーキオイルの交換を勧められます、湿気がブレーキオイル内に侵入するとべーパーロックが起こりやすくなったり、パイプ内を腐食させたりと言う事が発生します)
マスターシリンダーのエア抜きができたら、逆の手順で取り付け行きます、その際ブレーキパイプのナットが締めずらい時は無理に押し込まずブレーキパイプの角度を変えたりしして真っすぐに取り付けてください、材質が鋳物と真鍮なので斜めに入るとあとあと余計な出費となります、古い車です使える部品は大事に使いましょう。
※最初に外したブレーキペダルの割りピンは必ず新品に交換しましょう。
5・ブレーキフルードエア抜き
まずエア抜き前にブレーキフルードがボディに掛からないようにフェンダーカバーやビニールなどで保護しましょ、画像の状態ではダメです、もっとキチンと用意してください。
1・ブレーキリザーブタンクに一杯までブレーキオイルを入れてください、ここでエア抜き中にオイルが無くなりエアが混入すると最悪、マスターシリンダーを外してまたエア抜きからする事になります慎重に、もしくはブレーキフルードエア抜きツールを使うのが一番かとは思います。
2・作業は2人と1組で行ないます、(ブレーキフルード交換ツールを使えば1人でできます)まずはフルードを全域に行きわたらせるためマスターシリンダーから近い順(画像は右で違います)順番は※フロント左➱フロント右➱リヤ左➱リヤ右の順番で車両に乗ってブレーキペダルを踏んで離してを繰り返します、抜き側はドラムブレーキ後ろにブリーダーがあります、画像の青い工具が見えている所です、ここのナットを緩めてブレーキフルードが出てくるのを待ちます、出てきてもまだ抜くます、最初は空気が一緒に混じって出てきますが、その気泡が無くなれば次に行くと繰り返して4輪行います。
3・ブレーキラインのエア抜きに移ります、ここはブレーキを踏む人とエアを抜く人とのタイミングが必要となります。
今度は抜きの時の逆でブレーキマスターから遠い順にエア抜きを行います、要領はブリーダーを緩めるとブレーキオイルが抜けるので踏んでいるブレーキペダルは奥まで行きます、その際踏んだり離したりはせず、踏みっぱなしにします(途中で踏み離しをするとエアが混入します)。
では、具体的に説明します、踏み側と抜き側で掛け声などで意思疎通が必要となります。
- 【踏み側】ブレーキペダルを何度か踏み離しをしてブレーキペダルが一番高くなったらブレーキを踏んだまま保持します・・・・ここで抜き側に踏み込み状態の事を合図します
- 【抜き側】合図が来たらブリーダーを緩めてオイルを抜きます、その際踏み側が底まで踏み込む前に止めます・・・・ブリーダーを閉めた合図をします
- 【踏み側】再度何度か踏み離しをしてブレーキペダルが高くなるまで行い合図します
この作業をだいたい1輪で4~5回ほど行い完全に気泡が出てこない事を確認して4輪行います、その際完了するときにブレーキドラムを手で回してみて効いているかを確認するのも良いと思います。
私のFIATはいくらやってもリヤのブレーキオイルが抜けない
おや、ブレーキホースが詰まっている💦 ここから先はまた次回投稿します、通常でしたらここまででマスターシリンダーは完成すと思います。
※完成後はブリーダー付近はブレーキクリーナーなどで洗浄を行い締め忘れ防止で締めたところをペンキなどでマーキングするのも良いでしょう、重要保安部品ですくれぐFIATれも作業は慎重にまた今回の投稿による事故や破損、故障などにつきましても一切保証は致しませんのでご了承ください。
私は整備士歴は長ったのですが、ブレーキホース内部が詰まっていたのは初めてでした
コメント